伝統文化の伝承について

全国各地には、その土地ごとに素晴らしい文化伝統が培われており、

歴史の文献を紐解くと心をつき動かされる人々や事実に遭遇します。

日々節に思うことは、その土地にしかない魅力を、時代に合わせた形で後世に繋げていくことが

大切であると感じています。そして、先人の知恵と希望を繋げていく必要があると。

歴史上、良い意味で影響を及ぼした方がたくさんいます。その先人達の確固たる信念や、

命を賭して努力してきた方々を思うと、今、自分は恥ずかしくない生き方をしているか。

世の中で起きている悲壮感漂う出来事に少しでも改善させる努力をしたか。

もし、明日、自分の命が絶えるとしたら、本当にしたいことを出来たのか。と、そう感じずにいられません。

理想を抱き約八年。

ある方と出会い、それまで現実との葛藤で揺らいでいた気持ちが確信に変わりました。

「未熟だから出来ないとか、準備が出来ていないからなど、そういう気持ちに勝つことが一番大事。

臆せず、最もしたいことを、できることからすぐ始めた方がいい。

その中で最大限の努力をする。そうすることで、自然と道が開けてくる。」

自分に勝つ。この言葉を聞いた時、体の中心に太い柱が定まったように感じました。

天真正伝香取神道流「平法」(著:大竹利典氏 日本武道館 発行)に「人格は人の人たる資格であり、

武道、仏道、神道、儒道、書道、茶道、華道・・世に人格を養成する道がたくさんある。

特に武道は心と体を鍛える」とあり、大いに影響を受けました。こうした内容然り、

人としてあるべき指針となる精神性や魅力は、現代において触れる機会が少なくなってきております。

私の母は、成長の段階で、その時ごとに必要な状態を見極め、参考となる様々な書物を

さり気なく与えてくれました。そんな母をはじめ、尊敬する兄、恩師である柔道家の中村修先生や

書家の海老原露巌先生から得た影響は大きく、また、老舗旅館で勤めた経験は伝統を守る大切さと、

地域の特性も改めて感じさせてくれるものでした。

現在は、できることから地域活性の活動を広げておりますが、日本の魅力をきちんと認識し伝える事、

地域そのものをマーケティングし情報発信していくことは、海外に比べ日本は遅れています。

また、今後の人口衰退とともに危惧される伝統文化の担い手と衰退は、精神性が乏しくなることにも繋がり、

民力、国力の衰退にもなりかねない。そうした焦燥感から、自分にできること、したいことと結び付いています。

現在、活動をおこなっていて思うことは、文化や伝統、励みとなる言葉を伝えることで、多くの方が関心を持ち、

喜んでくださる。そして、希望を見出した姿を見ると、自身も生かされた気持ちになります。

今後の理想は、地域活性化の促進を行うと共に、尊敬する西行法師のように言葉により人を感動させ、

助けていきたい。そして、助けていただいた方々にも、恩返しができるよう励んでまいります。

月刊 武道 2015.10月号 掲載