【お茶と懐石料理】

日本にお茶が伝わったのは奈良時代のこと。

茶には解毒や眠気覚まし、疲労回復の効果がある事から、

当時は薬として用いられてきました。

しかし、空腹時に飲むと胃に刺激が強すぎ健康を害してしまう為、

少しずつ風習が変わり室町時代には食事の後に茶を飲むように

なっていったようです。

懐石料理の歴史を辿ってみると、懐石料理とは茶会でいただく料理

のことで、茶を飲む前に軽く食事をとり、胃を温め守る意味が

込められていました。そう考えますと、大事な人へお茶を出す為の

最高のもてなしが懐石料理だったのではないでしょうか。

ちなみに懐石という言葉が生まれたのは、昔、禅寺の修行僧が

冬の寒さや一日一食の空腹をしのぐため、温めた石を懐に入れて

暖をとったところから。やがて僧侶が厳しい修行を終えて夜食を

満足に取れるようになってからは、夜食のことを有り難い意味

を込めて「懐石」と呼ぶようになったそうです。

そして茶の湯の料理から生まれた懐石料理は、千利休時代のこと。

「懐石」という字を使うようになったのも、茶の湯の基本である

禅の思想・侘び茶の精神が意に沿った字として、この字があてられた

といいます。

侘び茶の懐石で利休がこだわったのは見た目だけを重視した

華美な茶会ではなく、茶や料理・形式など質にこだわったもの。

お茶や料理を体に負担なく、最も美味しくいただけるよう

旬の食材にこだわり、温かいものは温かいうちに、

食べる人の身になって心を尽くしたお料理なのです。