王羲之《蘭亭序》

書芸術の中で、王羲之は書聖として尊敬を集めています。

王羲之は東晋の時代に生きた書法家で、多くの名品を残しました。

とりわけ作品の中でも特に蘭亭序が代表的な作品として知られ

「天下第一の行書」として知られています。

蘭亭序は王羲之が西暦三百五十三年、旧暦の三月三日に友人たちと

蘭亭(現在の浙江省紹興市)に集まり、盃を交わしました時の作品です。

人々は盃を庭園内の小川に浮かべ、流れてくる盃が

前を通り過ぎるまでに詩を詠むという曲水の宴を催しました。

これに王羲之は心から楽しみ、酔いにまかせて筆をふるい

一気に書き上げたのが天下に名だたる《蘭亭序》です。

唐の太宗皇帝は王羲之の作品をすべて集めたことで有名ですが、

中でも《蘭亭序》はなかなか見つからなかったといいます。

実は王羲之の七代目の孫「智永」が収蔵していましたが、

最終的には手に入れたものの、原本はすべて太宗皇帝の陵墓に

治められ、真筆はこの世に伝わっておりません。

しかし、初唐の四大家とされる欧陽詢(おうようじゅん)、

虞世南(ぐせいなん)、褚遂良(ちょすいりょう)、薛稷(せっしょく)は

すべて《蘭亭序》を臨模しており、なかでも虞世南と褚遂良が臨模した

《蘭亭序》は現在まで伝えられ、書の最高レベルの作品「神品」と

称されております。

現在伝わる褚遂良の臨模本は黄絹に臨書されている為、

《黄絹本蘭亭序》といわれ、風雅で柔らかみがあり、神韻を得、

その風格は王羲之に最も近いといわれております。

唐人の臨模した《蘭亭序》は、虞世南・褚遂良・馮承素(ふうしょうそ)

の模本が最も有名であり、「唐人摹王羲之《蘭亭序》三種墨跡」と呼ばれる。

これらは清朝旧室に収蔵され、乾隆帝の最も珍蔵する作品であった。

現在は北京と台北の故宮博物館にそれぞれ分かれて収蔵されており、

滅多に目にすることのできない国宝となっております。