禅語「柳緑花紅」

【柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)】

/東坡禅喜集(とうばぜんきしゅう)

「柳は緑、花は紅」という、当たり前の事を一度疑って、

もう一度それらを見る。そして改めて柳や花を見た時に、

やはり柳はいっそう緑に、花はいっそう紅に見えるのだと再認識できる。

また、そうする事によって緑や花の本当の美しさを感じる事ができると

いう意味です。

絶海中津(ぜつかいちゅうしん)が絶賛した「十牛図」(じゅうぎゅうず)の

第九図に、「返本還源」(へんぽんかんげん)という、失った牛(仏性・本心)

を尋ね求め、もとに返るという場面があります。

・・非常に苦労して、見失った牛(仏性・本心)をつかまえてもとの家に

連れ帰るが、その家は出発する前の家とは根本的に違っている。

家に帰ってみたら、そこに見事な花が咲いていた。実は始めからそこに

咲いていたのですが、それが今までは見えなかった。

失った牛を求めて、苦しい世界をさまよい歩き、ようやくわが家に辿り着いた時に

出発する前はまったく目に入らなかったものが、鮮やかに見えた。

花の本然の姿、本当の美しさというものに、はじめて目覚める事ができたというお話です。

花や緑のあたり前のあるがままの美しさは、苦しい道程を経てはじめて分かる事が

あるのだと思います。